このレビューはネタバレを含みます。
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京都を舞台にして、芳蓮堂という古道具屋を中心に描かれた、不穏で妖しい幻想的な短編集です。とても面白く感じたのは、芳蓮堂の3人の関係者たちの役どころが一篇一篇で変わっていくところです。どの話も、芳蓮堂のそれぞれ古道具のどれかが係わっていきます。そして、それぞれの話がつながっていくのです。
個人的には、龍の根付の一篇がとても好きです。だんだん明らかになっていく、本当の先輩の姿が切ないけど、虚構の自伝を、自分を取り巻く世界を、自らの想像を、言葉で現実世界に息づかせた先輩は、ものすごい人だなと思います。
私は電車に乗っているときなどに読んでいたのですが、もっともっとと読み進めました。面白くて、一気に読み上げたくなります。私はこの作品が小説としては初めての森見登美彦作品だったのですが、読み終わったら、森見登美彦作品をもっと読みたい!という渇望が湧きました。
素敵な作品です。ぜひ、お読みください。